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『モンスターイーター ~ダンジョン飯 ボードゲーム~』リプレイ前編

はじめに

『モンスターイーター ~ダンジョン飯 ボードゲーム~』(以下、モンスターイーター)とは、その名の通り、8月10日に最新刊である12巻が発売されたばかりの大人気コミック『ダンジョン飯』(著:九井諒子/発行:KADOKAWA)のボードゲームです。
アニメ化と同時の発表であったことに加え、『ダンジョン飯』はその猛烈な人気にも関わらず関連商品が少ないタイトルなので、おかげさまで高い注目をいただいております。
ホームページなどにもルールの概要が掲載されていますが、もっと詳しいことが知りたいというご要望にお応えすべく、9月15日(木)の発売に先駆け、『モンスターイーター』を実際に遊んだ様子を文章にて公開することとしました。

前編:ゲームの準備(8/25掲載)
中編:ゲーム開始~迷宮浅部の冒険(9/1掲載)
後編:迷宮深部の冒険~ゲーム終了(9/8掲載)

という構成で3週連続で更新しますので、ゲームへの理解を深めながら発売をお待ちいただけますと幸いです。

さて、そんなわけで今回は前編ですが、ゲームの準備に入る前にもう少しだけゲームの説明をさせてください。この『モンスターイーター』、実は単なる『ダンジョン飯』のボードゲーム企画で終わる話ではないのです。そのタイトルからピンとくる方もおられるかもしれませんが、30年以上愛されている不朽の名作カードゲーム『モンスターメーカー』(作:鈴木銀一郎/発行:アークライト)がベースになっているのです。
『モンスターメーカー』の作者である鈴木銀一郎さんは、惜しまれながら2021年1月にご逝去されましたが、生前鈴木銀一郎さんからご許可をいただき、日本を代表するボードゲームデザイナーであるカナイセイジさんが『モンスターイーター』を完成させてくださいました。
つまり『モンスターイーター』は、「『モンスターメーカー』のシステムをベースに、『ダンジョン飯』をモチーフとして、カナイセイジが完成させた」ゲームなのです!
本作がいかにお腹いっぱいな企画か、ご理解いただけましたでしょうか。こういう企画は調整に時間がかかり、日の目を見ずに消えていくことも多いのですが、本作は関係者の皆様の粘り強い努力のおかげで、こうして発売日を発表するところまでたどり着くことができました!

そしてパッケージを見てください。
なんと豪華なことに、『ダンジョン飯』の作者である九井諒子さんの描き下ろしです! しかもアークライト版『モンスターメーカー』のパッケージへのオマージュとなっており、描かれているキャラクター数は敵味方合わせて圧巻の50体
裏話になりますが、このパッケージイラストのラフは、九井諒子さんに実際にゲームの試作版を遊んでいただいた後、わずか1週間ほどで届けられました。九井諒子さんがゲームを楽しんでくださったことが伝わり、カナイセイジさんを筆頭にスタッフ一同感激したものです。

カナイセイジさんといえば、これまでも『Dr.STONE』『ソード・アート・オンライン』『おそ松さん』『ポプテピピック』など多くの原作物ゲームを手掛けておられますが、その際、妥協することなく原作への理解を深めてゲームを製作されることでも知られています。
それは今作でも同様であり、そもそもゲーム制作を依頼する以前から『ダンジョン飯』のファンであったということもあって、こだわり抜いたゲームになっています。ゲームの処理的にはやや煩雑な部分もあるのですが(例えば各キャラクターには「種族」という項目があるのですが、そこを参照する迷宮カードは1枚しかないなど)、原作ファンに喜んでいただくため、吟味を重ねて採用されたものばかりです。

ゲームの中心になるカード類も、非常にこだわって作られています。
28枚あるキャラクターカード、こちらも嬉しいことに、九井諒子さんの描き下ろしです! さまざまな情報が記載されているのですが、なるべくイラストを大きく収められるようスッキリ見やすいデザインになっています。これらのグラフィックデザインは、『モンスターメーカー』同様decoctdesignの出嶋勉さんにお願いしています。出嶋さんは自作のボードゲームをいくつもゲームマーケットに出品されている方であり、ボードゲームへの理解度も非常に高い方です。
モンスターカードは、『ダンジョン飯』単行本カバーを彩ってきたイラストを収録。中ボスである「キメラ・ファリン」、ラスボスである「狂乱の魔術師シスル」を含めると、32種類のモンスターが登場します。
また特徴的なのがカードの裏! そう、モンスターが調理可能な場合、調理した料理のイラストが裏面に掲載されているのです。こちらのイラストももちろん原作コミックから収録させていただいているのですが、原作では当然モノクロでした。これを九井さんのタッチで着色してくださったのが、ダックルーズ -DucQrews-のみなさんです。「クトゥルフ神話の神話生物を料理にしちゃおう」という無茶な設定のボードゲーム、『クトゥルフキッチン』の独創的な料理イラストを手掛けてくださった方々であり、チームを率いる合鴨ひろゆきさんはプロの漫画家さんということもあって、今回も企画の意図通りの素晴らしいお仕事をしてくださっています。
アイテムカード、ダンジョンカードのイラストも原作コミックから収録させていただいているのですが、原作コミックのファンであれば、どれもニヤッとしていただけるものと思います。
もちろん原作コミックを知らなくても、カナイセイジさんがアレンジした『モンスターメーカー』の新作として、普通に面白いゲームになっておりますのでご安心ください。
さあ、内容物のすばらしさについて長々語ってきましたが、そろそろゲームそのものの紹介に移りましょう。

ゲームの概要

まず最初に、各プレイヤーは自分が担当する冒険者パーティをひとつ選びます。冒険者パーティは下記の5つがあります。
プレイヤーは自分の手番になると、基本的に「探索」を行います。「探索」とは自分の手札の探索カードを1枚出し、自分のパーティが迷宮をどれだけ探索したかを表すアクションです。
これが100%以上になると、そのパーティの前に中ボスである「キメラ・ファリン」が現れます。
キメラ・ファリンを倒すと、迷宮のさらに深い場所を探索することになります。
もう一度100%以上探索すると、今度はラスボスである「狂乱の魔術師シスル」が登場します。
狂乱の魔術師シスルが倒されると、ゲームは終了して得点計算を行い、得点で順位が決まります。

これが基本的なゲームの流れです。

手番では「探索」のほかに、「遭遇」という、モンスターカードをどこかの迷宮に送り込むアクションも行えます(『モンスターメーカー』を遊んでいる人ならおなじみですね)。ただこのアクション、『モンスターイーター』においては一味異なります。
というのも、『モンスターイーター』では「戦闘」で倒したモンスターを「調理」するという要素が存在するからです!(『ダンジョン飯』を読んでいる方なら想像が付きますよね)

『モンスターイーター』には「食糧」という要素が存在しており、これがないとパーティメンバーが回復しないのですが、このゲームにおいて「食糧」は非常に入手しづらくなっています。つまりモンスターの「調理」で得られる「食糧」は、非常に貴重なのです!
ですがモンスターには「弱くて調理しやすい」ものもいれば、「強いうえに調理できない」ものもいて千差万別。なので「弱くて調理しやすい」モンスターは自分の迷宮に、「強いうえに調理できない」モンスターは他人の迷宮に送り込みたいのが人情。ここの駆け引きが、非常にシビアで面白くなっています。

迷宮のモンスターとの戦いでは、「戦士」や「忍者」が活躍します。「魔術師」も強力ですが、「魔力」は「食糧」以上に貴重なので、ここぞというとき以外は温存しましょう。
迷宮を「探索」するうえでは、「鍵師」や「忍者」が頼りになります。彼らはイベントカードで罠にかかったときなどにも力を発揮します。

個性的な冒険者パーティの力を上手に発揮させ、高得点を目指しましょう!

それではゲーム開始!

今回『モンスターイーター』を実際に遊ぶのは、この4人です!

カナイセイジ(本作のゲームデザイナー)
出嶋勉(本作のグラフィックデザイナー)
編集K(本作のメイン編集者)
編集H(本作のサブ編集者)

編集K:まずはパーティの選択を行いましょう。
出嶋:わたしはかなり初期のテストプレイ版を遊んだっきりですので、各パーティの特徴を説明してもらえますか。

カナイ:「ライオスパーティ」はとにかく調理力の優秀さが際立ちます。その代わり初期に持っている食糧や貨幣はほぼないので、モンスターをガンガン倒しながら進む必要があります。まあ、原作通りですね(笑)。ライオス、センシ、イヅツミが前衛に立てるのも強いですし、チルチャックの特殊能力「リロール3」も非常に便利で、マルシルの魔法攻撃も強力とほぼ隙がありません。ただ、魔法を使えるのがマルシルだけなので、そこは注意が必要です。

「シュローパーティ」は、非常にバランスの良いパーティです。前衛のシュローとイヌタデが強いですし、ヒエンとベニチドリというリロール持ちの「忍者」が2人いるのも嬉しいポイント。安定して危機をくぐり抜けられるはずです。そして驚異のオールマイティキャラ・マイヅルが魔力と調理力を一身に背負います。ただ魔法を使えるのがそのマイヅルだけなのと、その魔法戦闘力がやや弱いところが注意点です。

「タンスパーティ」はパラメータをざっと見ただけだと、一見弱く見えますが、タンスとヤーンの魔力が3ずつあるのが非常に優秀です。前衛はナマリとカカしかおらずちょっと薄めですが、ここぞというときはキキの特殊能力「リロール1」が頼りになるはずです。正直地味なパーティですが(笑)、上手く立ち回れば普通に勝ち負けできるポテンシャルを持っています。

「カブルーパーティ」は……正直弱いです(笑)。原作に準拠するとどうしても仕方ないですね。ただパーティメンバーが6人いるので、最大火力という意味では多少有利……かも? 初期に持っている食糧や貨幣は潤沢なのですが、調理力がないのが大きな弱点です。『モンスターイーター』では、モンスターを倒しても調理に成功しないと勝利点になりませんので、調理力が低いというのは非常にマイナスなのです。それでもカブルーの戦闘力はそこそこ高いですし、魔法を使えるキャラがホルムとリンシャ2人いるのも心強い点です。

「カナリア隊」は逆に強いですね。ただ、その強さはかなりピーキーです。なにせメンバー6人のうち5人が魔術師なので(笑)。ゲーム中さまざまな場面で「鍵師」がいれば回避できる局面があるのですが、カナリア隊には鍵師がいないので、フレキとオッタが「鍵師魔法」の特殊能力を使わないと対応できません。さらに調理力もないので、カブルーパーティと同じ弱点を抱えています。ただしミスルン、シスヒスを中心とした瞬間最大火力のすさまじさは圧倒的です。なるべく無駄な戦闘を避け、ボスモンスターを倒すことを目指すべきでしょう。

編集H:一気の説明、ありがとうございます(笑)。
編集K:我々は散々テストしてますので、まずは出嶋さんに選んでいただきましょうか。
出嶋:そうですか。うーん。最初に選んでよいと言われると、やっぱり主人公であるライオスパーティですかね。
編集K:次はカナイさん、選んでもらえますか?
カナイ:わたしはカブルーパーティで勝つプレイを目指します(笑)。
編集H:ぼくはシュローが好きなので、シュローパーティをやらせてください。
編集K:残りはタンスパーティとカナリア隊ですか。その2択だと、リプレイ的には華のあるカナリア隊でしょうね(笑)。
カナイ:タンスパーティはいぶし銀ですね(笑)。
編集K:カナリア隊は取り回しが相当特殊なので、リプレイで取り上げておくと、「カナリア隊好きだから選ぼう!」でプレイして、にっちもさっちもいかなくなるプレイヤーを減らすことができるかもしれない(笑)。
出嶋:そんなに特殊なんですか?(笑)
カナイ:彼らは魔力が切れると何もできないので、ゲームに慣れてから選ぶのが無難ですね。

編集H:ではパーティが決まりましたので、キャラクターカードを受け取ってカードに書かれた「初期所有トークン」を受け取ってください。「食糧/貨幣トークン」は裏表になっていまして、パーティの共有資産です。「魔力トークン」はキャラクターごとに決められたものなので、魔力を持つカードの上に置くとよいでしょう。
カナイ:カブルーパーティは、初期のトークンは潤沢だなあ(笑)。

出嶋:ライオスパーティはほとんど物を持ってません(笑)。
カナイ:原作準拠なので(笑)。本当は魔力以外何も持ってなくしようかと思ったのですが、さすがにやめました(笑)。

編集H:シュローパーティは4メシ3金持ってます。

編集K:カナリア隊はパッタドルの持つ2メシ2金がすべてです。
カナイ:彼らは大半が罪人なので、彼女が管財しているイメージですね。

編集K:それから「迷宮浅部/迷宮深部タイル」を1枚ずつ受け取り、「浅部」の方を上にして自分の前に置いてください。
編集H:「浅部」を100%踏破すると中ボスの「キメラ・ファリン」が登場します。誰かが「キメラ・ファリン」を倒すことができたら、その時点で「浅部」を100%踏破しているプレイヤーは全員「深部」に進むことができます。その際、タイルを裏返してください。
編集K:モンスターカードも「浅部」と「深部」に分け、シャッフルします。
出嶋:モンスターカードはモンスターの面を上にして置くんですね。
編集K:(グラフィックデザイン担当の)出嶋さんはご存知の通り、モンスターカードの裏面は調理された後のイラストになっていますので、モンスターイラストの面を上にします。
編集H:このあと配る迷宮カードの中に「モンスター遭遇」というカードがあるのですが、そのカードを使うとモンスター山札の一番上のモンスターと戦うことになります。上に見えているモンスターを誰の迷宮に送り込むかが、熱いポイントです(笑)。
カナイ:机の下でシャッフルして、ドン!(机の上に出す) 浅部のモンスター山札の一番上はマンドレイク、これはかなり美味しいモンスターですね。

編集H:戦闘力が3しかないうえに、撃破報酬として食糧トークンが1ありますからね。
出嶋:撃破報酬ということは、倒しただけでゲットできるということですか?
カナイ:そうです。普通は調理判定に成功しないと何も得られないのですが、こいつは倒しただけでまず食糧トークンを1つ得られ、その後調理に成功するとさらに食糧トークン2個と、勝利点2点の権利を得ます。
出嶋:権利?
カナイ:ちょっとややこしいのですが、ちょうどいいのでいま説明しますね。調理に成功したモンスターカードは裏向きになって手元に置かれ、ゲーム終了時に得点になるのですが、手元に置けるカードの枚数には上限がありまして、アイテムカードと調理に成功したモンスターカード、合計で5枚までしか置けません。
編集H:6枚以上になった場合は、5枚になるよう選ぶ必要があります。
出嶋:勝利点の低いカードは、終盤捨てられる可能性があるということですね。
カナイ:マンドレイクの2点はかなり低いので、捨てられる可能性は高いでしょうね。
編集H:そして深部モンスター山は……、そいっ!(机の上に出す) ウンディーネです!

カナイ:いきなりヤバいのきましたね!(笑)
出嶋:戦闘力15ですか。強そうですね。
カナイ:強いうえに調理難易度が10と高く、かつ得られる食糧トークンが2と少ない(マンドラゴラと同じ)という、食べるには厳しい感じのヤツです。
編集H:でも、倒すと超貴重な魔力トークンがもらえますよ。
カナイ:まあ、いま深部の状況を心配しても仕方がないですね。それではマンドレイクがオモテを向いた浅部モンスター山札と、ウンディーネがオモテを向いた深部モンスター山札を作り、それぞれの上部に浅部のボスの「キメラ・ファリン」と深部のボスの「狂乱の魔術師シスル」を置いて、モンスター山札のセットアップは完了です。

編集H:迷宮カードをよく混ぜました。手札を配ります。手札は1人5枚です。初期手札にイベントカードがあった方は申告してください。そのイベントは処理せず脇によけ、引き直します。
カナイ:イベントありません。
出嶋:同じく。
編集K:ありません。
編集H:ぼくもありませんでしたので、このまますんなりスタートですね。では最後にスタートプレイヤーを決めましょう。最初はグー。じゃんけん。
カナイ:(グー)
出嶋:(チョキ)
編集K:(チョキ)
編集H:(パー)
カナイ:ゲーマーじゃんけんで編集Hさんからですね。

※ゲーマーじゃんけん
ゲーマーがじゃんけんを行う際、よく使われるルール。普通にじゃんけんを行うが、まず出した人の多い「手」を除外する。同数だった場合、通常通りのじゃんけんの勝敗を適用する。人数が多いときなど、決着が付くのが劇的に早くなる。
上記の場合、「チョキ」が2人いたので、まずその2人が脱落。残ったのは「グー」と「パー」なので、通常のじゃんけんの処理で、パーを出した編集Hの勝利となる。

編集H:あとは時計回りなので、ぼく(編集H)、編集Kカナイさん、出嶋さんという順番ですね。ではゲームをはじめていきたいと思います。
一同:よろしくお願いします~。

中編に続く!

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