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『オース』 デザイナーズノート その8

■目的とそこに至る道のり

成り行きに任せたエンディング

『オース』のゲーム終了には、大まかにいうと二種類あります。「成り行きに任せた」終了か、思想カードによって終わるかです。思想カードについてはここまでの記事で詳しく触れてきました。思想カードによる終了は、『ルート』の圧倒カードによる終了よりも頻度が高いのですが、成り行きに任せた終了の可能性も同程度にあります。

ゲームが成り行きに任せた終了を迎えた場合、プレイヤーは誰がVPを最も得ているかを調べ、そのプレイヤーが勝利者となります。成り行きに任せた終了はランダムに発生します。第5ラウンドの後、ダイスを振ってゲームが終了するかどうかを判定するのです。そこで終了せずラウンドが続くと、ラウンドがすすむごとにそこで終了する確率が高くなっていきます。第5ラウンドの後に終了する確率六分の一ですが、第6ラウンドの後はその倍、第7ラウンドの後はさらにその倍となり、第8ラウンドの後は必ず終了します。

『オース』にはこうしたレトロなデザイン感覚があふれています。ここでは、私のお気に入りのひとつ『The Napoleonic Wars』から多くのインスピレーションを得ています。

『The Napoleonic Wars』では、各ターンの終了時に、ヨーロッパが疲弊して戦争を継続できなくなるかどうかをダイスで判定します。出目が6ならそこでゲームは終了します。ゲームを継続したいプレイヤーは、カードを犠牲にすることで、このダイスを少し修正できます。

実際のところ、これはかなりのフラストレーションを与えることになります。『The Napoleonic Wars』は大規模ゲームです。これを遊ぼうとするプレイヤーは丸一日、あるいは少なくとも夕方丸ごとのスケジュールをゲーム充てなければなりません。昼食の注文やベビーシッターの用意も必要でしょう。それなのに、90分ごとにダイスを振ってゲームが終わるかどうか決めるのです。あまりにも早く終了してしまえば、無駄な一日だったと感じることになり、長引けばずるずると引き延ばされていると感じるでしょう。そんな代物を私はどうして『オース』に入れたくなったのでしょうか。

まずなにより、それによる利点が大きいのです。他のナポレオニックゲームと異なり、このMark McLaughlinによる『The Napoleonic Wars』は、ロマン派の時代やナポレオン全般に対して私が抱いている、政治的不確実性という大きな恐怖感を活写していると感じるのです。これにはゲーム終了方法も大きな役割を果たしています。プレイヤーは保守的なプレイスタイルを取ることができず、あらゆる機会で慎重さを投げ捨てて行動しなければなりません。

私は、このシステムから負の要素を取り除いて良い点だけを『オース』に取り込もうと思いました。いくつかの点でそれが可能でした。まず、『オース』はもっと短いゲームです。『The Napoleonic Wars』は90分から8時間にわたるゲームですが、『オース』はだいたい45分から2時間におさまります。一般的には、プレイ時間が短かいゲームほど、によるゲーム時間のランダムな変化幅が小さくなるので、ランダムなゲーム終了に適しているのです。第二に、『オース』はレガシー形式なので連戦に向いています。たとえゲームがすぐ終わったとしても、すぐ第二戦が始められるのです。『オース』はごく短時間(普通なら3分程度)で準備できるゲームですから、すぐにゲームを開始できます。

私が作るタイプのゲームは学習に時間がかかるということは判っています。ですから、ゲームが最短時間で終了したとしても物足りなさを感じることなくたやすく遊び続けられるようにしたかったのです。
そして、不確実性にはそれに見合った見返りがあります。ゲームがいつ終わるのかはっきりと判らないなら、プレイヤーは自ら勝利に近づいてそれをもぎ取ろうとするでしょう。なりふり構わずプレイすれば六分の一の確率でゲームに勝てると判っているなら、そうする価値があります。もしダイスの目が微笑めば、それにふさわしいクライマックスを迎えられるのです。たとえゲームが終了せず継続したとしても、そうしたことによってゲームの状況はもっと面白いものになります。基本的に、不確実性は保守的プレイに罰を与えるものなのです。

この点については、ゲームの進行に伴うVPの変化によってバランスをとっています。誓言の条件を満たすことで得られるVPはゲームが進むにしたがって増加するのです。そのトラックをご覧ください。

実際にこれが意味するものは、過去2ターンにわたって誓言によるポイントを得ているプレイヤーは、ゲームに勝利するために充分なポジションにいるものの、後続のプレイヤーはゲーム終了時に同点だった場合に優先されるという点、さらにはゲーム終盤になるとさらに得点機に恵まれるという点において、有利であるということです。もちろん、終盤では誓言の条件を達成するのは難しくなります。市民側プレイヤーが数人で協力すれば、どんな追放者プレイヤーよりも多くの得点機を得られるでしょう。ただし、市民側が他を引き離した時点で市民同士のいさかいが始まるでしょうね。

4種類の誓言

この章の最初のほうで4種類の勝利条件について触れました。ここでは、それらについて深く掘り下げてみたいと思います。各ゲームにおいて、これらの勝利条件のうちひとつだけが誓言として登場します。残りは思想カードという形で登場しますが、姿を見せるのは2種類程度でしょう。

誓言の中で「覇権の誓言」はもっとも単純です。これの条件は他の誰よりも多くの拠点を支配することで、戦争、そして自分の領土を侵略から防衛することによって達成できます。

「人民の誓言」はそれよりも少し複雑です。各プレイヤーは「国民の支持」というポイントをもち、それは相棒のカードが提供します。相棒のエリアで表になっているカードは、そのカード種の信望バンクの残高に等しい「国民の支持」ポイントとみなします。ここまでゲーム内の経済システムについてはあまり述べてきませんでしたが、基本的にはカード種ごとに小さなバンクが存在するのです。あるカード種のカードを購入すると、支払った信望は最終的にはそのカード種のバンクに貯められるのです。また、カードに支払う場合もそのカード種のバンクに移されます。バンクの残高が最も多いカード種に属するカードを相棒にすれば、プレイヤーは大衆に受け入れられるのです。そして、国民の支持を最も得ているプレイヤーがこの誓言の条件を満たします。

残りの誓言(献身と保護)はどちらも特権を保有することが条件となります。ゲームにはふたつの特権(「王室の恩恵」と「大暗黒秘儀」)があり、プレイヤーは自分のターンに、「王室の恩恵」なら信望、「大暗黒秘儀」なら魔術を使って入札が可能です。これによって特権を獲得すると、その価値は入札価格にしたがって修正されます。

そして、「献身の誓言」の条件を満たすには「暗黒秘儀」の特権、「保護の誓言」の条件を満たすには「王室の恩恵」の特権を保有していなければなりません。実に簡単ですね。

これらふたつの特権は特殊な能力をもっているので、対応する誓言や思想がプレイに登場していなくても役に立ちます。「大暗黒秘儀」があれば、自分のターンにカード種の残高を修正する能力(「堕落」)が使えますし、「王室の恩恵」であれば、カードの能力を使うときにまずそのカードをマップから捨てられる能力(「追放」)が使用できるのです。

原則的に、特権の価値はゲームの進行にしたがって増加しますが、次回に説明する戦争アクションによって劣化する場合もあります。

エンディングと続き

『オース』のデザインに関して気に入っているもののひとつが勝利条件です。これは、『ルート』の勝利条件とPaxシリーズの体制コントロールによる勝利点計算方式に対する、愛情を込めた対案のつもりです。

それらに対して私が手を加えることができたのは、『オース』が複数のゲームを継続しながらストーリーを語れるからです。『オース』では、いくつものゲームにわたって行動を展開できるようにすることで、そういった壮大な物語を作り上げようと試みているのです。

また、『オース』は展開が遅いゲームでもなければ単純なゲームでもありません。『オース』では、プレイヤーはアグレッシブである必要があります。突然誰かが目的を達成してゲームが終了することも多いのです。

勝利システムをこのように設計するためには、これまでの私の多くの作品よりも強く、相互作用と相互依存、そしてリスクをプレイヤーに求めるデザインである必要があります。それらの要素もまた、『オース』の多世代構造とうまくマッチします。『オース』では多くのゲームで、プレイヤーのスキルが勝利を決定します。ゲーム中に行う判断にはすべて意味があり、またこのゲームはとても広い戦略上の余地をもつため、計画的なプレイヤーに報酬を与えています。と同時に、時として幸運なプレイヤーが勝利する場合もあります。王を決める機会にあふれているのです。

これまで私が作ってきたゲームに比べると、『オース』の持つ相互依存性に対してプレイヤーははるかに寛容的だと判りました。その理由は単純です。あるプレイヤーが勝利したとしても、成長し変化するゲーム世界の形成にはすべてのプレイヤーが関与するからです。ほとんどのゲームと同じく、『オース』の結末はある意味で最後の審判ですが、それだけではありません。『オース』の結末は同時に続編につながります。そしてその続編は、プレイヤー全員の判断によって作られるのです。

歴史は勝者によって記されますが、すべての遺産が消されるわけではありません。

 

――Cole Wehrle 『オース』デザイナー日記より
訳注:記事に登場する『オース』のシステムは、現在発売中の『オース』のシステムとは一部が異なっています。特に恩恵は、旗幟にその機能が引き継がれてはいるものの、かなり大きな変更が加えられています。

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