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『オース』 デザイナーズノート その4

記憶するマップ

『オース』では基本的に三種の事柄を記録として保持します。まず、ゲームマップの一部を保持し、それによってプレイに影響を与えるルール変更も保存します。次に、そこまでのゲームに登場したキャラクターや集団、思想をカードのデッキとして保持します。最後に、ゲームがどのようにして終了したのかを保持し、その勝利条件に対応して次のゲームの勝利条件が改変されます。

今回はこのゲームのマップについての話です。マップは、このゲームの主要な要素のうち、最後にかたちになったものです。ゲームとゲームの間にデッキを成長させ変化させたいという考えは、初期のデザイン段階からありました。何十もの異なる勝利判定システムを試行錯誤する段階で、ゲームのアクション構造を作り上げるずっと前に、そのアイデアのおおよそのアウトラインができていました。

しかし、マップに関しては異なっていました。ゲーム中に変化し、そしてゲームとゲームの間でも保持されるマップを私は望んだのです。そのために、レゴのような部品で構成されるシートにまで簡素化できるだろうか、あるいは繰り返し貼れるステッカーのようなものが必要になるだろうかと考えながら、いくつかの実に奇抜なプロトタイプを作りました。また、いつか満杯になったり、ある最終状態に近づいていくようなシステム、たとえば、プレイを重ねるたびにどんどん華やかになっていく『グルームヘイヴン』のボードのようなものにはしたくありませんでした。

マップシステムには、基本的にはふたつのことを求めていました。まず、実際に距離が定義され、ボードが進化できること。そして、保存が簡単で準備に1分と掛からないことです。

ある時には、薄いプラスチック片を差し込むための部材が付いた、プレイヤーが必要に応じて丸めたり広げたりできる巻物状の大掛かりなマップを設計しました。しかし、そこでもまた、スコープの問題が頭をもたげました。

このころに、お気に入りだった古いデジタルゲーム『The King of Dragon Pass』をプレイしてみました。この作品は、伝統的な双方向のフィクションゲームとしても、手強いストラテジーゲームとしても傑作です。このゲームでプレイヤーは小さな部族集団を率い、常に忠実な助言者の助けを借りて小集団を地域の覇者へと導きます。ゲーム内の判断(とその報酬)は徹底的に個人的なものです。難民がやってきました。受け入れますか? 不作を補うために隣人の家畜を盗むべきでしょうか? ライバル部族から祝宴に招かれました。出席しますか、それともこれは罠でしょうか?

前回お話しした読書とこのゲームのプレイによって、私は野望を国家(あるいは原始国家)レベルの規模へと引き下げることにしたのです。空間そのものに対する認識を修正する必要があったのかもしれません。ゲームのマップを作るにあたっての最大の障害は、ボードが地図のように見えることにこだわっていたことでした。『リスク』のマップや伝統的ウォーゲームのように、ゲームボードには場所が連結して存在していなければならないという考えです。たいていの場合これは正しいのですが、私にとっては悪い出発点でした。プレイヤーに与えるべきは世界地図ではなく、その世界の精神的なイメージだったのです。

原典となった書籍を読み返すと、著者が空間に対してよく使う描写に驚きました。そういった描写の多くが、地域を単位としていたのです。中心地があり、そこはつながりと具体的なもので満たされています。次に、少し離れてはいるがまだ故郷に近い地域。そして遠隔地、そこは故郷からも他の遠隔地からも離れています。

私はノートに殴り書きでひとつの絵を描きました。

図注:いつもはもっと綺麗なんですが。

この区分が、空間に対する新しい考え方を与えてくれました。たいていのゲームでは、空間は均質です。そう、日常体験のほとんどでもそのとおりになっています。でも、高速道路上で車が故障したら、空間はもっと恐ろしいものとして感じるでしょう。実際には空間が均質ではないと判ります。次の高速出口までわずか数マイルですが、徒歩には遠い距離です。そして出口に到着しても、徒歩を念頭において配置されてはいない修理店に到達するには危険な横断歩道を越えなければなりません。

私は、『オース』でこの分類を使いたくなりました。世界が、時には広く時には狭いと感じるものであってほしかったのです。
そのために、3種類の地域「揺籃の地」「諸州」「後背地」を元にしたモーメントシステムを構築しました。中心部、中間部、周辺部に分かれた円を想像してもらえば解りやすいでしょう。

ある拠点と別の拠点の間の距離は、ふたつの要素によって変化します。出発地点と行き先です。これには特に際立った点はありませんが、このバージョンではマップの中央から離れるにしたがって「近さ」の感覚が変わるようにしたかったのです。言い換えれば、円の端っこから別の端っこに移動するのは、まず中心部に戻ってから端に移動するのと変わらないのだということになります。

図テキスト:Saga 移動と全体的な地理 後背地 諸州 中央 首都 アセット  図注:これはこのゲームを『Saga』と呼んでいたころの概念図のひとつです。左図では、旅行に掛かる時間(T)が自分の位置する地域によって決定されることがされています。

この地域による判定法を中心に据えようと思いました。たとえば、後背地に属する各拠点は他の後背地の拠点から(そして他の地域の拠点からも)等距離にあるとみなされます。間にあるヘクスを数えてその移動修正値から移動コストを計算するのではなく、ふたつの拠点の地域を確認してそれらに対して自分が使用可能な(あるいは拠点がもつ)能力を調べるだけで、即座に距離が判定できるのです。

また、この形式のマップであれば中核を簡単に変更できるのも魅力でした。あるゲームで既存の首都を支配することなく勝利したプレイヤーは、新しい首都を定めてマップの中核をそこに移すことができるのです。

マップの保存

さて、ここではゲームプレイにおけるマップの機能について少し述べることにしましょう。『オース』のマップは、何枚かのカードを配置できる複数の拠点によって構成されています。本質的にこのマップは共有のタブロー(カード配置場所)であり、プレイヤー全員がその作成と破壊に寄与します。通常は5~15枚程度のカードがゲームに存在し、それらのほとんどがゲーム内の様々な拠点と明確にリンクしています。

ゲームが終了すると、勝者の支配する領土が次のゲームのマップとなります。時には(特に現体制が権力を維持する場合)、開始時のマップはそのまま成長し発展します。またある時には(体制が転覆した場合)、次のマップにはひとつの拠点だけが残り、そこを中心として新しいマップを一から作り上げることになるでしょう。

この頃、私はYouTubeで初期のゲームプログラミングに関するドキュメンタリーを山ほど観ていました。”The 8-Bit Guy”のドキュメンタリーやBen Eaterのブレッドボードコンピュータ(実験用基板上で組んだコンピュータ)の動画です。
それらのどの動画がきっかけだったのか、いつ発生したのかは憶えていませんが、どこかの時点で私はブレイクスルーを見出したのです。地域の仕切り板を使えば円状のマップを1次元配列に簡素化できることを。

たとえばカードの山を想像してください。ここで0は拠点カード、1はその他のカード、そしてXが仕切り板です。

こういう配列の山札があるとしましょう。01101X0111X01011

そして、とても簡単な指示にしたがってプレイヤーがカードを配れば、テーブル上に次のような世界が出現するのです。

図注:古いコンピュータに関するオタクなYouTube動画をいっぱい観て思い付いたってわかるでしょ?

こうすれば、マップは複雑な関係性を保持したままで小さな箱に収納し、データを失うことなく簡単に展開することができるのです。高価な特製ボードを製作担当にお願いする必要はなくなりました。ゲームの製作に関しては、また別の点で問題が発生するのですが、それはゲームシステムでカードをどう利用するか、主要なデッキがゲームとゲームの間でどう変化するかについて触れる時にお話ししましょう。

――Cole Wehrle 『オース』デザイナー日記より

 

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