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『このエピローグは変わらない』をプロ作家同士でプレイしてみた

取材・文:新井亨(サイドランチ)
監修・編集:アークライト

 

はじめに

『このエピローグは変わらない』は、アークライト・ゲーム賞2024で優秀賞を受賞した、ミスボドゲームズの秋山真琴氏による協力創作ゲーム『終わりから始まるクロニクル』のリニューアル製品版です。
本作の魅力をお伝えするために、今回は創作というステージの第一線で活躍されている、ミステリ作家の我孫子武丸氏、マンガ家の磨伸映一郎氏、TRPGシナリオライターのディズム氏、そしてゲームデザイナーの秋山真琴氏にお集まりいただき、実際にゲームをプレイしていただきました。

編集A:本日は皆さん、お集まりいただきましてありがとうございます。まずは簡単な自己紹介から始めたいと思います。
我孫子:我孫子武丸と申します。『このエピローグは変わらない』では、帯コメントと、一部のエピローグを書かせていただきました。なので、すでに何度かプロトタイプに当たる『終わりから始まるクロニクル』をプレイしております。
ディズム:TRPGのシナリオ作成などをしております、ディズムと申します。
磨伸:Group SNEさんでボードゲームのマンガを描かせていただいております、磨伸映一郎と申します。
秋山:『このエピローグは変わらない』のゲームデザインをいたしました、ミスボドゲームズの秋山真琴と申します。

編集A:では、これから『このエピローグは変わらない』を実際にプレイしたいと思います。ゲームの目的は、ざっくり言うと「みんなで物語をつくろう」ということになります。特徴はエピローグ、つまり結末が決まっているところですね。物語の設定はカードとダイスでランダムに決まります。
これから皆さんには【ページカード】というものをランダムにお配りします。この中からページを選んでいただき、同時に書いていただきます。このフェーズを3回(注:3人の場合は4回)繰り返すと物語が完成する……というのが大きな流れですね。

一斉にページカードを公開するので、物語には矛盾が生じそうになることもあります。そんなときは皆さんで協力して新たな指針を見つけてください。ゲームが終了し、物語が完成したら、タイトルを付けてゲーム終了となります。通常ボードゲームは勝敗を決めるものが多いのですが、このゲームに勝敗はありません。物語がつむがれる過程そのものや、キャラクターを動かすこと自体を楽しむのが、このゲームの目的です。
こまかいところは、実際にゲームをやりながら説明しましょうか。

第1ゲーム開始! 気になるエピローグは……

編集A:最初はチュートリアルの意味も込めて、ゆっくり遊んでみましょう。今回は私が参加して、秋山さんには観戦していただくということで。
秋山:わかりました
編集A:では、まず私の方でエピローグを決定したいと思います。今回のエピローグはこちらになります。

編集A:次に物語の設定……主人公や脇役の名前・性別・一人称・年齢・職業、物語中の経過時間、ラストシーンの場所などを決めましょう。まずは3つのダイスを振って、その目に従い【経過時間カード】に書かれた時間を確認します。えいっ。(ダイスを振る)11なので今回は……【1日】です!


磨伸:1日!?
ディズム:短い(笑)!
編集A:短い……ですね(笑)。これで、12ページの物語の経過時間は【1日】に決定しました。ダイスロールはプレイヤー同士で回していくので、次は我孫子さんにお願いします。
我孫子:わかりました。3ですね。
編集A:3は……【月の裏側】です。


我孫子:えーっ!!
編集A:SFになりましたね(笑)。ちなみにカードの特徴として、3や18は突飛な設定になっています。ダイスを3つ振る特性上、これらの数字が出る確率が低くなっているのを生かした仕組みですね。では次に、主人公を決めていきましょう。ディズムさん、お願いします。
ディズム:はい……。あ、7です。
編集A:7は、名前が【シオン】ですね。男女ともにありそうな名前ですけど、カードに男性とあるので男性にしてください。では磨伸さん、続いてよろしいですか。
磨伸:はいはい。えーと、10です。
編集A:これでシオンの一人称が決まりました。一人称は【僕】です。

――このようにダイスロールで次々と設定を決めていき……。

【経過時間】1日
【最後の場所】月の裏側
【主人公】名前:シオン(男)/一人称:僕/年齢:20代半ば/職業:バックパッカー
【脇役】名前:タイヨウ(男)/一人称:おのれ/年齢:高校生/職業:ウェイター

編集A:はい、今回の設定はこのように決まりました。それでは【ページカード】をお配りします。お互いのページ数は明かさないようにしてください。
我孫子:配られるページが連続することもあるんですか?
編集A:はい。今回のルールでは完全ランダムでお配りしているので、連続することもあります。

一同:(カードを確認)

編集A:確認されましたかね?では、さっそく執筆を進めたいと思います! 皆さん、どのページから書き始めるか宣言してください。設定を見返しながら考えてくださいね。

いよいよ執筆開始!

我孫子:では9でお願いします。
ディズム:お互い宣言したページを書くんですよね。じゃあ……5を書きます。
磨伸:いきなり矛盾が出そうで怖いな……。8にします。
編集A:じゃあ僕は、1でいきます。書き出しは難しいんだよな(笑)。
磨伸:ところで制限時間とかはあるんですか。
編集A:ルール上は3分ほどですね。
磨伸:なるほど。

(執筆中……)

編集A:皆さん書けましたか? 発表はページ番号が若い順なので、私から、ディズムさん、磨伸さん、我孫子さんの順になります。そうそうたるメンバーの中で発表するのは緊張しますが……発表します!

旅の道中、僕は不思議なしゃべるねこに出会った。彼は名前をタイヨウと言った。

編集A:おしゃべりなネコが最後に出るので、最初に一旦登場させておいたほうがいいかな〜と思って書いてみました。次は5ページ目のディズムさんですね。
ディズム:はい、では読み上げます。

猫は言った。 「人間は大変だね。ちょっと跳んでみたらいいじゃない。ジャンプすれば月くらい簡単に行けるよ」

ディズム:1日しかないんですもんね、展開が早いと思うのでこんなふうにしてみました。
編集A:これならいろいろと設定を回収できそう。次が8ページですね。
磨伸:あっ、僕ですか。我孫子先生が9ページ目でしたっけ?
我孫子:そう、つながっているからちょっとマズいですね。
磨伸:ヤバい! でも発表します(笑)。

だが待って欲しい、その「猫」たる存在は 本当に〝実在〟するものなのだろうか…? 今、僕が立っているこの大地すら誰が保証してくれるのか……?

編集A:ここに、我孫子さんの文章がつながるのか。9ページ目の発表をお願いします。
我孫子:はい、では発表します。

猫は言った。「君たちがそんなんだからこんなところに取り残されてしまったんだよ。一体どうやって帰るつもりなんだい?」

一同:おお〜っ!
我孫子:なんだか、後ろをにらんで書いちゃいましたけど……。
ディズム:いや、でも破綻していない。よかった!
編集A:むしろ、ここから広がりそうな気がしますよ!

予想外の新キャラ登場

編集A:2フェーズ目以降は、前のフェーズで最後のページを書いた人から時計回りで宣言します。我孫子さん、ディズムさん、磨伸さん、私の順番ですね。
我孫子:それでは、2ページ行きます。
ディズム:うーん……11ページを。
磨伸:じゃあ6ページで行きます。
編集A:これ、連続しちゃうんだよなあ……。僕、12ページ書きます。
ディズム:おっ。
編集A:今のうちにオチを決めちゃおうかと。では、執筆をお願いします。

(執筆中……)

我孫子:これは、設定以外のことを書いてもいいんですか?
編集A:はい、大丈夫です! 設定はあくまで「物語の指針」になればいいなという緩いものなので、使っても使わなくてもOKです。
秋山:とくに反則というものはないので、自由に書いていただけたらと思います。プレイヤー同士のさじ加減も、このゲームの魅力かなと。
編集A:さて、皆さん書けましたか。
磨伸:書けました!
ディズム:こちらも書きました。
我孫子:大丈夫です。
編集A:では、2ページの我孫子さんからお願いします。
我孫子:はい。

「タイヨウという名前だけど好きなのは月だね。月にはウサギが住むと言うけれどほんとうなのかな?」

編集A:おおっ、しっかりつないでいただいて、ありがとうございます(笑)。では次に……。
磨伸:6ページですね? では読み上げます。

「位置書き換えのチートコードかしら? 貴方のバックパックに搭載された量子コンピュータに入力すれば、月の裏側にだって一瞬で行けるわ」 僕の隣で彼女はメガネを光らせながら、そう指摘する。

ディズム:……誰だ!?
磨伸:とりあえず登場人物を増やしてみました(笑)。
編集A:謎の女性が現れ、シオンがとんでもないバックパックを持っていることが判明しました。登場人物を増やすのも全然問題ないので、自由に書いていただけたらと思います。
ディズム:次は11ページですね。発表します。

夢見る力が失われたんだ。 どうして月に行けたのか。どうしてここがここじゃなくなったのか。 どうして猫の声が聞こえなくなったのか。

ディズム:元々しゃべるネコがいるから、ちょっとファンタジーっぽくしてみました。
編集A:ディズムさんの11ページを受けて、最後は僕ですね。12ページ目、行きます!

「そうか…」そう、つぶやき、僕は月の裏側でリュックをおろした。ゆっくりと腰を据えると、猫は僕の隣でゆっくりと眠りについた。

我孫子:ほお……。
編集A:と、こんな結末です。
我孫子:つながらなさそうな気がしたけど、SFでもあり、最後の方はシュールな文学の匂いも感じられる物語になりそうですね。
磨伸:たしかに(笑)!
ディズム:我孫子さんが書かれた、9ページ目の「そんなん」が、どんななのかずっと考えています。これが効いてきそうな気がします。
編集A:「そんなんだから」ってことは、それより前に何かを。
ディズム:うん、やらかしてますよね(笑)。
磨伸:僕は何となくSFのイメージだったので、科学文明が発達している世界や仮想空間が舞台のストーリーっぽく進めています。
編集A:そうですね、磨伸さんが発表してくださった8ページ目には、そんな世界が広がっているのを感じます。ディズムさんが書かれた5ページ目の「飛ぶ」っていう表現も、SFだと別の意味を持たせられそうですね。アークライトの社内でテストプレイするときは、こんなにキレイに進まないんですけどね(笑)。今のところすごくまとまっているので、ちょっと驚いています。

最終フェーズでつむがれたストーリーを発表!

編集A:では3回目です。もう手元のページカードは1枚だけなので、お互いのページを発表しましょう。

(各自宣言)

編集A:我孫子さんが3、磨伸さんが4、ディズムさんが7、僕が10です。3ページと4ページがキレイにハマるといいですね。では、お願いします。
磨伸:ムズい……! 難しいなあ……。
我孫子:できました。
ディズム:ちょっと、まだ考えてます(笑)。
編集A:では、皆さんが書き終わるまでお待ちしましょう(笑)。秋山さん、ここまでご覧になっていかがですか?
秋山:うん、すごくリリカルな雰囲気ですよね。最初はけっこうSFタッチでしたけど、だんだん情緒のある、エモいお話になっている印象です。

(執筆中……)

編集A:全員書き終わったみたいですね。最後の発表はルール準拠で、1ページ目から順番に、書いた人が文章を読み上げていきます。通しでストーリーの全貌が明らかになるわけですね。では、1ページ目の僕から。《旅の道中、僕は不思議なしゃべるネコと出会った。彼は名前を「タイヨウ」と言った。》
我孫子:発表済みの2と、今回書いた3を続けて言うんですよね。2が《「タイヨウという名前だけど、好きなのは月だね。月にはウサギが住むというけど、ほんとなのかなあ?」》で、3が……

一緒に旅をしていた僕の恋人は目を輝かせて猫を抱き上げる。「猫型ロボットかな? それとも知能強化された猫?」

磨伸:では、4ページ行きまーす。

いや、しかし…いつ僕はドリームデバイスを起動させたのだろう? 現実のつらさから飛んで逃げたくて愛用こそしているが しゃべる猫なんて存在は入力した記憶がない……

編集A:わあ、行間でつながりましたね。では、続きをお願いします。
ディズムネコは言った。「人間は大変だね。ちょっと飛んでみたらいいじゃない。ジャンプしたら月ぐらい簡単に行けるよ」》
磨伸:《「位置書き換えのチートコードかしら?あなたのバックパックに搭載された量子コンピュータに入力すれば、月の裏側にだって一瞬で行けるわ」僕の隣で彼女はメガネを光らせながら、そう指摘する。》
ディズム:では、7ページです。

思考だけがとんで、あらゆる世界に行けるようになった。 実際にはいなくても、感じられる世界。

磨伸:《だが待ってほしい。そのネコたる存在は、本当に実在するものなのだろうか。今、僕が立っている大地さえ、誰が保障してくれるのか?》
我孫子:《ネコは言った。「君たちがそんなんだから、こんな所に取り残されてしまったんだよ。いったいどうやって帰るつもりなんだい?」》
編集A:最後の発表ページ。僕ですね。

その昔、人間は眠りにつくとというものを見れたらしい。この化学が発展したこの世界では簡単に月に行くことができても、僕たちの

ディズム夢見る力が失われたんだ。どうして月に行けたのか、どうしてここがここじゃなくなったのか。どうしてネコの声が聞こえなくなったのか。》
編集A:《「そうか…」そうつぶやき、僕は月の裏側でリュックを下ろした。ゆっくりと腰を据えると、ネコは僕の隣で眠りについた。》……で、最初に決めたエピローグにつながります。《それ以降、そのおしゃべりなネコが人間の言葉を話すことはなくなった。何かと口うるさかったが、静かになると少しさみしい。》

磨伸:……うん、案外つながりましたね!
我孫子:ああ、良かったですね。
ディズム:最後もまとまりました。

みんなでタイトルを決めよう!

編集A:では、せっかく作ったストーリーなのでタイトルを考えましょう。最後にページを埋めた人から、リレー方式で言葉を持ち寄って決めます。今回は編集A、我孫子さん、ディズムさん、磨伸さんの順番ですね。言葉の前後や間が歯抜けになると思いますが、埋め方は各自におまかせします。では僕から、やってみましょう!

編集A:我孫子さんは、この「月と」の前や後ろ、あるいはスペースを空けてでも構いませんので、タイトルに入る言葉を書き込んでください。
我孫子:安易にネコって書きたくないなあ……。う〜ん、もうわかんない(笑)。これでお願いします。

ディズム:次は僕か。「月の」の前に入れてもいいんですかね?
編集A:はい、大丈夫です。自由に書いてください。
ディズム:ありがとうございます。では、このように。

磨伸:なるほど。じゃ、こうですかね。

編集A:全員のアイデアで、タイトルが決まりました。今回のストーリーは『夢見る月と僕たちの満天の星空』です!
一同:(拍手)
秋山:すばらしい! 百点満点だと思います。

第1ゲーム感想会

編集A:途中でも話したのですが、たくさんテストプレイをした身としては、トップレベルでいいなというのが率直な感想です。
磨伸:これまで、物語が破綻したケースもあったんですか?
編集A:「えいっ!」と突拍子もない文章を発表する人がいると、ギャグが強めのコメディーになったりはしますね。
磨伸:率先して破綻させようとするプレイ(笑)。
編集A:次のゲームではぶっ込んでいただいても面白くなるかなと思います(笑)。さて、ゲームを終えてみて皆さんいかがでしたか?
我孫子:お題の時点で1本のストーリーにまとめるのはムリだろうと思っても、誰かの機転で何とかなるようにできている。すごいなあと感心しました。【1日】【月の裏側】という設定は厳しいのだけれど、すり合わせがあるから書けるんですかね。
ディズム:自分一人では思いつかないようなことが広がっていく過程や、「そう展開するならこうしよう」という感覚は、一人で書くときには味わえないのでとても楽しかったです。
磨伸:創作を生業としているメンバーが集まると、うまくいくものだなと(笑)。じゃあ、普段まったく創作に携わっていない人がプレイしたときにどうするかと考えたのですが、自分が見聞きしたことがあるマンガや映画のシーンを代入してみるのもいいのかなと思いました。
編集A:困ったときにほかの作品の設定に倣ってみる。
磨伸:そうすることで、いろんな人が楽しめるゲームじゃないかと思います。
編集A:実はエピローグカードを作る際にも、別の作品を連想して文章を書けるよう、作家の皆さんが文章に工夫を凝らしてくださりました。いろいろなコンテンツに触れている方には、元ネタ探しでも楽しんでいただけるのではないかと思います。
秋山:ディズムさんが書いた11ページの「夢見る力が失われたんだ」という記述に対し、磨伸さんの「ドリームデバイス」という設定が加わったことで2つのワードが自然につながりましたよね。ほかにも磨伸さんの6ページにある「彼女」。全員が「誰やねん!?」って思ったはずですが、我孫子さんが「僕の恋人」というワードでしっかり回収しました。別のプレイヤーが書いた言葉を自分の担当ページでうまく紐づけて、物語の世界を自然に広げられるのは、さすがだなと。このメンバーで初プレイというのが驚きです(笑)。
編集A:熟練のプレイヤーみたいでしたね。もっとも、創作においては当然皆さん熟練されているんですが(笑)。
秋山:それと、タイトル決めの際に「月の」というワードが出たときに、自分なら「夢見る」って付けるなと思って見ていたので、ディズムさんが「夢見る」と書かれたときは内心「あ、それです!」とドキドキしました。
ディズム:あるんですね、そういうことも(笑)。
秋山:めちゃテンション上がっていました(笑)。
ディズム:TRPGのような「ライブで完成する楽しさ」があるから、動画配信者がプレイしたら盛り上がりそうですね。
編集A:観戦しているだけでも、物語ができていく様子が面白いんですよね。いろんな楽しみ方ができるゲームなので、多くの方に遊んでみていただきたいと思います。ではチュートリアルはここまでということで、続いて第2ゲームを始めましょう!

慣れたところで第2ゲーム

編集A:さて、全員が一連の流れを理解したところで、今度は秋山さんに参加していただき、僕は進行に徹したいと思います。4人ともすでに熟練のプレイヤー並みということで、今回のエピローグは……こちらです!

編集A:ちなみにエピローグカードは、プレイヤーの「慣れ具合」によってある程度区分けされています。第2ゲームのエピローグは、ある程度慣れた方向けになっています。では持ち回りでダイスを振り、設定を決めていきましょう。

(ダイスロール中……)

編集A:さあ、今回の設定はこのようになりました。

【経過時間】6カ月
【最後の場所】動物園
【主人公】名前:ハヤト(男)/一人称:オレ/年齢:40代前半/職業:スタントマン
【脇役】名前:アカリ(女)/一人称:わたし/年齢:中学生/職業:落語家

磨伸:落語家!?
我孫子:なかなかですね。
編集A:ええ、なかなかです(笑)。では、始めましょうか。

まさかの急展開

編集A:皆さん、ページの宣言をお願いします。
我孫子:1ページから書きます。
ディズム:8を書きます。
磨伸:では、4行きます!
秋山:私は12ページをやってみます。
我孫子:エピローグが決まっているから、12ページが本当のラストじゃないってことですよね。
編集A:そうです。12ページはエピローグへの橋渡しですね。今回は登場人物の設定がかなり特殊なので、とても楽しみです。
我孫子:しかも6カ月……。
編集A:設定はあくまで方針を決める目安なので、大きく縛られなくても大丈夫です。では、執筆スタート!

(執筆中……)

編集A:全員が筆を走らせているときの、この静かな時間もいいんですよね。
秋山:アナログだと、みんなの進み具合が見て取れるのも面白いですよね。「あの人、悩んでるな〜」とか。
ディズム:書きました〜!
我孫子:ちょっと待ってください、うまく書けない……。
磨伸:普段の創作ではデジタルに慣れちゃっているから、とっさに文章が出てこないことがありますね。
我孫子:すみません、遅くなりました。1ページ目の僕から発表ですね。少し長いですが、行きま〜す。

オレの腰はもはや、スタントマンとしては再起不能な状態だと医者は言った。むしゃくしゃした時、ぶらりと入った寄席で衝撃的な出会いがあった。

秋山:腰……。40代ですからね。
磨伸:次は4ページ目、僕ですね。皆さん、2回目は引っかき回すプレイをご所望なのかなと感じましたので、あえてぶっ込んでみます。

ハヤト『な、なにィーッ!? 上野動物園と天王寺動物園が合体して、そこから特設リングが現れたァーッ!?』
??『わたしはお前に挑戦状を叩き付けるぞ、ハヤトマン!!』

秋山:ハヤトマン! スタントマンだから、何かしらのプロレス的な……。
磨伸:特設リングが現れました(笑)
秋山:衝撃的ではありますね、今ね。
ディズム:はい(笑)。では8ページ目を発表します。

撮影に使用するライオンが脱走したらしい。 現場はパニックだ。 オレはゆっくりと歩き始める。

編集A:動物園パニック……。
秋山:では、12ページ。私の順番ですね。

園内に倒れ伏したハヤトを遠目に見つつ、アカリは最後の言葉を紡ぐべく大きく息を吸った。

編集A:ラストはモノローグじゃなく、あかりのセリフだったんだ。
秋山:我孫子先生の「医者は言った」のタイミングですが、これが6カ月前ということでいいですかね? そういう流れにしてもいいかなあと。
我孫子:大丈夫だと思います。次も悩むなあ……。

ますますカオスな展開に

編集A:皆さん悩みは尽きないと思いますが(笑)、次のフェーズに移りましょう。
我孫子:じゃあ11でお願いします。
ディズム: 5を書きます。
磨伸:僕は7ページで行きます。
秋山:2でお願いします。
編集A:今回は飛び飛びで、バランスがよさそうですね。

(執筆中……)

編集A:ハヤトマンの4ページを受ける、ディズムさんが難しそうですね。
ディズム:うん……書き終わりました。
磨伸:こっちもできました!
編集A:では皆さん完成したようなので、若いページの秋山さんからお願いします。
秋山:はい。2ページ目ですね。

高々と前足を上げるゾウに、たてがみを揺らして威嚇するライオン。ハヤトの目には、壇上に座る落語家女子が、上野動物園にいるのがはっきりと分かった。

ディズム:すごい! では5ページ目、続きます。

「帰ってきたのか、パンダマン」 それ以上の言葉は不要だった。オレには再起する必要がある。 その日から、地獄の猛特訓が始まった。

一同:(笑)
我孫子:パンダマン……(笑)。
磨伸:じゃあ次、7ページ目です。

がっぷり四つで組み合い、試合は膠着状態………かと思われたが、突然横から生きたライオンの一撃がおそいかかる。オレは合気パワーを利用してその攻撃をいなし、この状況の把握に勤めた。

我孫子:(笑)。最後、11ページ目ですね。発表します。

ライオンを檻に閉じ込めることはできたが、脱出するのは不可能なようだった。オレの意識が薄れていく……

秋山:ああ、いいですねえ。後につながっていくんですね。
編集A:構図としては、我孫子さんと秋山さんが書いた冒頭と終盤に挟まれている、ディズムさんと磨伸さんというような。
秋山:これ、かなりカオティックな状況ですよね。私、次を書くのがかなりしんどいと言うか……。ハヤトマンとパンダマンのがっぷり四つっていうのもなかなか(笑)。
我孫子:あかりが落語家だから、落語の「動物園」っていう噺でつながるかなと思っていたんですが、到底ムリなんで……(笑)。1回目みたいな感じになるのかなあ。あんまり話すと誘導にもなりかねないので、この辺にしておきます。
ディズム:広がりに広がった状況で、これがつながるのか、さらに広がってしまうのか。どっちに転んでも面白いですね。
磨伸:往年の週刊少年漫画的なものをとりあえずぶち込んでみて「あとはどうにかなるだろう」と思っていたんですが、今のところ割と本当にどうにかなっているのはすごいなと感じます(笑)。秋山さんが12ページで「もしかすると、すべて話芸の世界の中で起きている話なんじゃないか」という可能性を見事に提示してくれたので、全体のつなぎがラクになっていますよね。このアシスト、すごくうまいと思いました。
編集A:次のフェーズでは連続した9と10が同時に執筆されます。うまくつながるか、気になるところですね。

新たな物語が完成!

編集A:それでは皆さん、残りのカードを開いてください。
一同:(カードを開く)
編集A:我孫子さんが3ページ、秋山さんが6ページ、ディズムさんが9ページ、磨伸さんが10ページですね。第1ゲームと同じように、最終フェーズでは1ページ目からラストまでを順番に読み上げます。では皆さん、執筆してください!

(執筆中……)

秋山:何とか書けました。
ディズム:こちらも書きました。
編集A:このゲームは、ガツンとぶっ込んでホームランを打ちたい人と、間をつなぐ送りバントをしたい人に分かれるんですよね。僕は整合性を取ってページの間を埋めるのが楽しいので、送りバントタイプかもしれません。
ディズム:そういうふうになるんだろうなあ……。
磨伸:はい、終わりました。
我孫子:できました。
編集A:全員が書き終わりましたので、1ページの我孫子さんから通しで読んで見ましょう。
我孫子《オレの腰は、もはやスタントマンとしては再起不能な状態だと医者は言った。むしゃくしゃしたとき、ふらりと入った寄席で衝撃的な出会いがあった。》
秋山《高々と前足を上げるゾウに、たてがみを乱して威嚇するライオン。ハヤトの目には、壇上に座る落語家女子が上野動物園にいるのがはっきりとわかった。》
我孫子:では、3ページを発表します。

彼女が言葉を口にした途端、すべては現実となる。匂いや触感さえも感じられるようだった。

磨伸《ハヤト「な、なにィーー!? 上野動物園と天王寺動物園が合体して、そこから特設リングが現れたァーッ!?」
??「わたしはお前に挑戦状を叩きつけるぞ、ハヤトマン!!」》
ディズム《「帰ってきたのか、パンダマン! それ以上の言葉は不要だ!」オレには再起する必要がある。その日から地獄の猛特訓が始まった。》
秋山:6ページ目ですね。

あれから6ヶ月。 ハヤト「精神と時の部屋で修行を積んできた。もはやオレに敵う人間はいない。さあ、パンダマン。決着をつけよう!」

磨伸《がっぷり四つで組み合い、試合は膠着状態……かと思われたが、突然横から生きたライオンの一撃が襲いかかる。オレは合気パワーを利用してその攻撃をいなし、この状況の把握に努めた。》
ディズム《撮影に使用するライオンが脱走したらしい。現場はパニックだ。オレはゆっくりと歩き始める。》……に続けて9ページです。

あの日見た、フィクションを本物にする力。 あれを会得すれば、俺にもまだできることがあるかもしれない。 本物を倒せば、何かわかるかもしれない。

磨伸:えー、じゃあいいですか?

「アカリマン!落語呪法でオレたちごとコイツを閉じ込めろぉーッ!!」 そう言われ印を切り始めるや否や霊力で編まれた檻が彼らの周囲を包み込む!アカリのラクゴ・パワーだ!

一同:(笑)
我孫子《ライオンを檻に閉じ込めることはできたが、脱出するのは不可能なようだ。俺の意識は薄れていく。》
秋山《園内に倒れ伏したハヤトを遠目に見つつ、あかりは最後の言葉をつむぐべく、大きく息を吸った。》
編集A《――そして、誰もいなくなった。》

真の主人公はハヤトではない!?

編集A:では感想戦の前に、先ほどと同様にタイトルを決めてまいりましょう。最後のページを書いたのが秋山さんなので、秋山さんから我孫子さん、ディズムさん、磨伸さんの順にお願いします。
秋山:困りましたねぇ〜。こんなふうにしたいと思います。
我孫子:超訳……?
秋山:旧訳とか新訳とか、そんなイメージで。
編集A:ということは元の作品が……。
秋山:まあ、あるのかも……という感じです。
磨伸:(笑)
我孫子:超訳から間を空けて、最後にこんなのはいかがでしょう。
編集A:うんうん! 最初は「超訳」、最後は「ウォーズ」ですね。ではディズムさん、お願いします。
ディズム:う〜ん、すごく解釈に手こずる……。これでお願いします。
編集A:アニメ映画っぽいですね。おそらく磨伸さんには「復活の」と「ウォーズ」の間を埋めていただく形になるかと。
磨伸:はい、ではこういう感じで。
磨伸:ハヤトが主人公と見せかけて、実は本当の主人公のあかりが登場する序章だったというイメージです。アニメの第1話で華々しく登場する人物はブラフで、2話目から真の主人公が登場するみたいな。
編集A:『超訳 復活の落語超人ウォーズ』。ハヤトマンでもパンダマンでもなく、落語超人アカリマンが主人公だった!
秋山:いいですね。

第2ゲーム感想会

磨伸:2回目なので「マンガ的な違和感を投入してみたらどうなるんだろう」と思って実験的にやってみたのですが……それでも見事に回収されて、破綻せずに終わったので、皆さんさすがだなと思いました。
編集A:行間を想像することで、ちゃんとつながるストーリーですよね。
磨伸:どんなムチャな設定を入れても、全員にちゃんと作り上げようという意思さえあればまとまることがわかりました。
編集A:そういう意味では、今回磨伸さんには「まとめよう」ではない役に回っていただいたわけですよね。
磨伸:ええ、どちらかと言えば暴れる方の……。
一同:(笑)
編集A:結果としては、磨伸さんのおかげで物語が大きく動いたように思います。
ディズム:すごくムチャクチャなように見えて、筋を探せばちゃんと存在するというか、読み解きようがある内容になりましたね。最後のあかりの「そして誰も……」というセリフが、磨伸さんの言うところのラクゴ・パワーの力なんだろうなって、納得しました。
磨伸:(笑)
ディズム:それでどうにか丸く収まった感じが出た。今回も面白かったです。
我孫子:磨伸さんの「暴れる」っていう行動がすごいなって思いました。僕はどうしても回収する方向というか、理屈や常識で「こうなったらこうだ、ここへ持って行くにはこうだろう」と考えてしまいがちなので。それに暴れると言いながらも、きちんと要素の部分はしっかり守ってくれている。そのおかげで破綻を免れて回収できたので、とてもうまい暴れ方なのだろうなと……変な話、感心しました。
一同:(笑)
我孫子:いやいや、本当に(笑)。最初に決められた設定がある中で、よそから発想を持ってくるのはすごいなって思います。
秋山:私は率直に、この場に参加できて非常に楽しかったですし、いいストーリーができたんじゃないかなと感じています。第1ゲームではお互いはじめましてということもあり、おそらく「どこまでやっていいんだろう」という探りもあったかと思いますが、第2ゲームではプレイヤー間の信頼関係が生まれたことで、どんなボールがきても誰かがキャッチして、連携をつなぐという体制ができたのではないでしょうか。
編集A:それは第2ゲームを見ていて感じました。
秋山:途中でディズムさんと編集Aさんが話していましたが、私も整合性を取って作っていく工程が好きなんです。どうすれば5と7の間にある6がキレイにはまるのかなとか、パズルのピースを自分で作ってはめていく感覚というのかな。磨伸さんの4ページ、リングが現れる展開も非常にインパクトがありましたし、冒頭で我孫子先生が「スタントマンとしてもう限界」と書ききってしまうことで、スタントマンなのにその設定を生かせないというアンビバレンツが生まれていたのにも痺れました。
編集A:それで、スタントマンからレスラーっぽい立ち位置になりましたよね。
磨伸:スタントマンの「マン」だけが残ったっていう……(笑)。
編集A:今回お集まりいただいた皆さんは、お一人で創作に向き合う時間が多いと思います。このゲームで協力しながらひとつのストーリーを作ってみて、いかがでしたか?
我孫子:プロトタイプの『終わりから始まるクロニクル』からプレイさせていただいているんですが、「ヘタなこと書けないな」っていうプレッシャーがあって、毎回かなり緊張します。それと、カード一発の面白さを取るか、全体の整合性を取るかが頭の中で常にせめぎ合って、どちらを選択するかという状況になると本当に苦しいんですよ、これ(笑)。整合性は大事なんだけど、カードを出すときには文章単体でウケも取りたくなるから、いろんなことを考えちゃう。でも、これからこのゲームをプレイする方には、あれこれ考えすぎずにリラックスして楽しんでいただきたいですね。
磨伸:僕は「作家会」っていう特殊な環境でアナログゲームをプレイすることが多いんですが……。何が特殊って、みんな創作に慣れている人ばかりだから、大喜利的なゲームや物語を作るゲームが簡単にできちゃうんですよ。でも慣れていない人が突然こういう系統のゲームを渡されても、ウケるどころか答えを出すこともできないことがある。それで敷居が高いって感じてしまうこともあると思うんです。その点『このエピローグは変わらない』は、物語を作るというよりも、周囲の人が考えたパーツのどこを拾って、どこをつなげるかというパズル的な要素が強いので、誰もが創作の面白さに触れられると思います。
ディズム:プレイ中に編集Aさんが「ホームランを打つのか、送りバントをするのか」というたとえをしていました。みんなでひとつのストーリーをつくると、誰がどんなタイプか見えてくるのが不思議ですね。文章を書くというシンプルなプレイの中で、個性が色濃く出るのが面白いなあと感じました。

編集A:今回は物語の創作のプロが集まって『このエピローグは変わらない』をプレイしていただきました。皆さん、本日はありがとうございました。
一同:ありがとうございました。

~おしまい

※本プレイはオンラインにて行われました。本文中に使用されたページカードはアークライトによる代筆の再現となります。

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