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12.122025
『オリジン・ストーリー』デザイナーズノート その2
『オリジン・ストーリー』のデザイナーズノートより
Stonemaier Games公式HPに掲載された『オリジン・ストーリー』デザイナーズノートを紹介いたします。本作のゲームデザイナーであるJamey Stegmaier氏とPete Wissinger氏による開発ストーリーを全2回にわたり掲載いたします。
その1はこちら
10月5日:テストプレイ、イベント、2人用ゲーム
深掘り(Pete)
ゲームの作成に着手してから数週間も経たないうちに、テストプレイはすでに軌道に乗り始めていました。1つ改善が必要だった点として挙げられたのは、ゲームの流れについてでした。一部のテストプレイヤーたちは参加者全員へ同時に影響を与える能力の多さに圧倒させられていました。これではゲームが無駄に長くなり、頭をパンクさせてしまいます。
Jameyは思うままに一部のゲーム内容を変えてしまうような能力を生み出し、ゲームが記憶に残るような瞬間をいくつももたらしました。強烈な効果を持つカードをそのままボツにするのではなく、これらを使ってストーリーカードとは異なる「イベントカード」を作り出しました。これらはいわゆるコミックの「クロスオーバー」で、その世界観へ全キャラクターが巻き込まれます。ただし、ゲームごとに1枚のみ使用されます。
これによりたくさんの変化的なルールセットを組み込むことができました。Jameyと私は独自の仕組みを持ったトリックテイキングゲームを数多く遊んできましたが、これができるだけ多くのアイデアをカードゲーム1つへ組み込むための私たちなりのやり方です。各ゲームでは1枚しか使用されないため、ゲームの進行に奇妙な味変をもたらす調味料となります。我々はゲームが記憶に残るような瞬間を提供したく、その点に関してイベントはこれ以上ないものだという確信があります。
JAMEY:
『オリジン・ストーリー』の中盤でのイベントのテーマ性を非常に気に入っています。18枚もの異なるイベントカード、そして3ラウンド目の開始時に全プレイヤーへ向け、その中の1枚が公開されます。ゲームごとに1枚だけイベントカードを選ぶ仕組みは、2点の理由で採用してよかったと思っています。1つ目はイベントをより印象深くできること、2つ目はプレイヤーのエンジンビルドを過度に阻害しないことです。多くのイベントではスーパーヒーローコミックの伝統的な展開をリスペクトしています。

PETE:
私たちがプレイテストを行う中で取り掛かっていた1つの課題は、2人ゲームをうまく機能させることです。様々な理由から、2人でトリックテイキングを行うのは困難でした。こういった類のカードゲームの2人ゲームはあまり盛り上がらない傾向にあります。『Fox in the Forest』や『Jekyll vs Hyde』のような成功を収めたタイトルは、特に2人ゲーム専用に絞ってデザインされています。他の人気のトリックテイキングは大抵、箱に「2人」のゲーム人数の記載をしていません。なぜなら、1対1では面白くないからです。
一部のトリックテイキングゲームでは、架空のプレイヤーを登場させる2人ゲームルールがあります。『Enemy Anemone』はトリック内で手札から2枚のカードを使用するだけなのに、これが2人ゲームの際に驚くほどに真価を発揮しています。『The Crew』と『The Fellowship of the Ring』には協力型パズル要素として、2人のプレイヤーが部分的に架空の第3プレイヤーを操り、隠された手札をプレイします。Sean Ross氏考案の『Yokai Septet』の2人用バリアントルールでは各プレイヤーへ手札の代わりにトリックでプレイできる、表向きと裏向きカードが混ぜられた「ストローパイル」が配られます。
Jameyと私は2人だけで数多くのテストプレイを実施してきたので、2人ゲームがうまく機能する方法を何度も試行錯誤しました。最終的にたどり着いたテーマに沿う解決案は「相棒」でした!
各プレイヤーへトリックにプレイできるほぼ伏せられた状態の第二の手札を配り、4人ゲームかのようにプレイします。これにより、2人ゲームでは全く機能しなかったヴィラン陣営での戦略性も生かせるようになりました。相棒を追加したことでトリックが多少なりとも確実性を帯び、両プレイヤーは相棒たちがどのカードをプレイできるかがわかります。
ただし、ゲームの基本概念や戦略は依然としてすべて保たれたままであり、カードプレイではプレイヤー数が多い時のような意外なほどの刺激を保ち続けています。今ではこのゲームが真価を発揮するのはこのゲーム人数なのではとも思い、お気に入りの2人用トリックテイキングの一つになっています。

JAMEY:
特別なルールを用いず、「相棒」というプレイヤーを加えれば2人プレイで『オリジン・ストーリー』を楽しめるようになったことをうれしく思います。
自身の相棒がカードをプレイするとき、相棒の2枚の表向きのカードから選択します。プレイしたあと、可能であれば相棒の手札のカード1枚を表にします。ルールは簡単ですが、奥が深いシステムです。
また、本日はゲームプロトタイプや様々なサンプルの内容物が保管してある私の「秘密の棚」の中を特別にのぞいてみたいと思います。この動画は数年前に撮影したものです。『オリジン・ストーリー』の発表に合わせて、当時の中身をようやく公開できます。その動画がこちらです。
10月6日:最後の仕上げとヒーローの正体明かし
最後の仕上げ (Pete)
開発が終盤へ向かうにつれて、ゲームの可能性を最大限発揮できるように何点か大きな変更を入れました。まず、手札間での特殊能力の公開ドラフトをやめました。これはテーブルに置かれたカードに書かれている小さな説明文をプレイヤーが読むのは、時間がかかってしまうからでした。それにドラフトで獲得させられたカードが自身のエンジンや次の手札とうまく機能しない可能性もありました。
解決策はいたって単純で、プレイカードを受け取ったのちにプレイヤーへ3枚のストーリーカードを配り、その中の1枚を選んで自身のストーリー置き場に加えるというものです。これは、現在の手札を有利にするような戦略的な判断を下しながらも、それと同時にカードの入手方法での煩雑さも軽減できます。これにより、ゲームの進行を劇的に加速させられ、プレイヤーにエンジン構築を考える余裕を与えられました。

Jameyが当初から優先項目にしていた一点は、「オリジン・ストーリー」というコミックが劇的な結末、いわゆるクライマックスへ向けてゲームが徐々に最終ラウンドへと展開していくことです。最後のスーパーヒーローカードについては、開発を通して何度もテコ入れをしました。最終的に私たちが採用したのは終盤に大量得点の一発逆転が見込める上に、自身のエンジンが目指す方向の参考にもなる一連のカードです。この「ヒーローの公開」はゲーム内で最高に楽しい瞬間になります。なぜならプレイヤー達はここまで作り上げた各自のエンジンの最後のピースを待ち望んでいるからです。
JAMEY:
45分で、ゼロから(わずかな差異性を持つキャラクター)からヒーローへと成長していく、この駆け上がる感覚こそが『オリジン・ストーリー』の真髄です。ゲーム開始時に、各プレイヤーには最終的に変身する2枚のスーパーヒーローが配られます。(これらの大きいカードは早見表カードとしても機能し、裏面にはラウンドの全手順が記載されています)。新規プレイヤーはこれらのカードを5ラウンド目まではあまり気にしないことに気づきました。しかし『オリジン・ストーリー』に慣れてくるとゲーム序盤からそれを軸にして戦略を立て始めるようになるかもしれません。
各自のスーパーヒーローはプレイヤーへ強力な能力や大量得点をもたらすだけでなく、各々がスポットライトを浴びるシーンをも提供してくれます。『オリジン・ストーリー』では、それぞれのラウンド準備がほとんど同時に行われ、相手プレイヤーマットの全貌をいちいち確認する必要もありません。ですが、5ラウンド目の開始時に、一人ずつどのスーパーヒーローになったのか、つまりプレイヤーだけの物語の集大成を明かすのはとても良いなと感じました。

(いつか実現することを願いながら)『オリジン・ストーリー』以外にも、お気に入りのスーパーヒーローとそのヒーローがテーマとなったゲームは何か、そのゲームのどんな要素でスーパーヒーローになった気分を味わえたかを聞かせてほしいです。
――Stonemaier Gamesブログ(外部ページが開きます)より
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