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12.122025
『オリジン・ストーリー』デザイナーズノート その1
『オリジン・ストーリー』のデザイナーズノートより
Stonemaier Games公式HPに掲載された『オリジン・ストーリー』デザイナーズノートを紹介いたします。本作のゲームデザイナーであるJamey Stegmaier氏とPete Wissinger氏による開発ストーリーを全2回にわたり掲載いたします。

10月3日:ブレインストーミング、ストーリーカード、3手番のプレイ
ゲームデザインを進める中でブレインストーミングは好きな作業の一つです。なぜならその時のゲームには無限の可能性があるからです。
本日は、『オリジン・ストーリー』でプレイヤーがプレイマットに配置するカードと数ラウンドのプレイ動画を見ながら、ゲームを解説していきたいと思います。また、10月2日のアートについての投稿を周知すべく、こちらにClementine Campardouによる最新アート記事の投稿を記載します(原文で外部ページが開きます)。
ブレインストーミング(Pete)
Jameyから前回のプロジェクトで未使用のアートを使用したいという初期案があり、『オリジン・ストーリー』のテーマはすぐに決まりました。Jameyは、スーパーヒーロー(またはヴィラン)の成長がカードを場にプレイすることによって徐々に紡がれ、ゲーム終了時に完結した物語になるようなトリックテイキングゲームにしたがっていました。この初期案のブレインストーミングは実に私向きでした。というのも、私は根っからのコミック愛好家で、実現したいアイデアがすぐに湧き上がってきたのです。
複数の初期コンセプト案を、共有のブレインストーミング文書という形で作業を進めて、たたき台のプロトタイプを作成しました。面白いことに、最初期に思いついたことのほとんどが、最終的に完成したゲームを形作っていました。ゲーム内のトリックテイキング要素をシンプルにすることで、他の要素をより複雑化できました。
私は初期段階でプレイマットのカードを手札で構築していくような、ある種のエンジンビルド要素をスーパーパワーに持たせるのはどうかと提案しました。
ゲームが進行していけば、プレイヤーたちはコンボを編み出して非対称的な能力をもてるようにもなります。
Jameyと私はお互いHiroken氏がデザインした『TRICKTAKERs』が大好きでした。この作品はトリックテイキングゲームにおけるプレイヤーの特殊能力の限界を非常に広げてくれた作品でした。このゲームで私たちが着目したのは、ゲーム中、プレイヤーは手札のカードを見た後で能力のドラフトを行うという点です。こうすることで、ランダムに引いた手札によってプレイヤーたちの能力や目標に矛盾が生じる問題が軽減されます。これと似たようなものを私たちのスーパーパワーのエンジンビルドにも取り込む必要があると確信しました。
キャラクターの背景を表現するようなエンジンビルドにしたかったので、プレイマットのカードをコミックのページの上にコマのように置いていくアイデアを思いつきました。これらのカードは物語の中で様々な展開を表します。例えば、イベント、特殊な道具、宿敵などです。
Jameyと私は最初のプロトタイプの作業を分担して行い、私は『The Crew』のようなゲーム内で達成すべきトリック目標が記されているカードを担当し、Jameyは大量の特殊能力をもたらすカードを担当しました。

JAMEY:
トリックテイキングゲームではプレイヤーがゲーム開始時よりも終了時に力強さを感じることは稀です。だから成長の概念は私にとって非常に重要でした。その一部として『オリジン・ストーリー』は複数ラウンド制で(『Cat in the Box』のような)、単なる1手札の概念としてではなく、プレイヤーへストーリーカードを積み上げていく時間を与えました。同時に、プレイヤーがゲーム開始時から手一杯にならず、5ラウンドをかけて選択し、パワーが徐々に上昇していきます。
ストーリーカードをデザインするのは非常に楽しかったです。全部で64枚あり、各プレイヤーは最初の4ラウンド開始時に(自分の手札を確認した後で)3枚を引いて1枚を手元に残します。
これらのストーリーカードがギミック的にも、テーマ的にもあなたのヒーローの生い立ち(オリジン・ストーリー)を形作っていきます。また、カード種類の豊富さ、そしてゲーム中はそのうちの4枚しかプレイできないことも、本作の高度なリプレイ性に繋がります。
コンテンツクリエーターによる本格的なプレイ動画は近日公開予定ですが、『オリジン・ストーリー』をどのようにプレイするかを体感していただけるようにセットアップとトリックテイキングの3手番の動画を撮影しました。該当の動画はこちらからYouTubeで視聴可能です。
10月4日:初期テスト、スタミナ、陣営選択の調整
初期テスト(Pete)
エンジンビルドのプレイマットは私たちがテストプレイで最初に解決すべき課題でした。プレイヤー達には手札ごとに新たな能力を手に入れてほしいと思いながらも、最終ラウンドで8、9個もの異なるパワーを駆使するのは困難だと感じました。プレイヤー達が各手番ですべての能力を使用できるような調整をしつつ、かつその部分でトリックテイキングのカードプレイにうんざりしないようにしたかったのです。
そこで私たちがたどり着いたシステムは、プレイヤーたちが自分のプレイマット上のカードを起動させるために使用するスタミナというリソースです。最終的にこれがバランス調整の役に立つ最高の道具となりました。ゲームの流れを変えられるほど超強力な効果でありながら、プレイヤーのリソースを使い果たすほどの楽しい能力が作れるからです。おかげでゲームのデザイン幅が大きく開かれました。また、手札から獲得できるポイントを最大化させるように自身のエンジンを起動させたとき、若干のリソース管理要素も発生しました。
ヒーローとヴィランのモラル的な陣営要素は初期段階からあったもので、ゲーム内に落とし込むために様々な方法で試行錯誤を繰り返しました。私たちの最初の試みは自分のキャラクターを特定の陣営に誘導するオークションのようなシステムでした。しかし、多くの非対称能力をもつゲームにオークション要素を追加するのは、プレイヤーに負荷をかけてしまう要求だと判断しました。トリックテイキングをスムーズかつ直感的なものにしたかったのです。
完成時に採用した構造は『Bug Council of Backyardia』より着想を得たものです。このゲームでは、プレイヤーはトリック勝利を狙うか、ゼロトリックを狙うかを宣言してからラウンドを開始させます。トリックを狙うプレイヤーは、1トリックごとに1点獲得するのに対して、ゼロトリックを狙うプレイヤーはトリックに負け続ければ大量得点できるような仕組みとなっています。大量得点が見込めますが、1トリックでも勝利してしまうと0点となってしまいます。
この仕組みが『オリジン・ストーリー』とうまく嚙み合ったのはテーマ性のおかけで、理解しやすかったからでした。トリックは日常を守ることを表しており、ヒーローはそれを多く勝ち取ることを望みますが、逆にヴィランはトリックを取らないように行動します。この陣営システムと連動するカードを作ることで、ヴィランになりたいプレイヤーがヴィラン用のエンジンを組むのが容易になりました。
最終的には見送りになった初期デザインの1つは、完成したプレイマットを1つの得点とするものでした。元々は、トリックテイキングを得点源の1つとし、プレイマットを完成させること自体も勝利までの道筋とするようなアイデアでした。しかし、プレイテストを通して以下の理由から取りやめました。
まず、プレイヤーは自身のエンジンにそれほど多くのカードを追加しないため、セットコレクション用のカードを獲得する際に大きな決定をするタイミングが少なかったのです。また、山札はタグとキーワードを含めた多くのカードによって構成されているため、プレイヤーのほしいカードが来るとは限りません。
トリックテイキングゲームの得点獲得を担うシステムはエンジンビルドのみにすべきだと、早い段階で判明しました。
JAMEY:
スタミナシステムによって、プレイヤーに柔軟性(往々に選択しがたい)のある選択の余地を組み込めたことをとても気に入っています。プレイヤーは自身の手札と、限定的ですが徐々に増えていくスタミナを見ながら、「今回のラウンドではどのストーリーカードを展開すべきか」と頭を悩ませるのです。
私たちはスタミナアイコンについて議論し、さまざまな選択肢を検討しました。最終的にはスタミナとは形容しがたくも、テーマ的にはぴったりの吹き出し(コミックにあるような)に落ち着きました。こちらはディーラーマーカーを囲んでいるスタミナトークンです。

陣営の選択は各ラウンドの駆け引きを加速させます。陣営を選ぶだけでも、ヒーローとしてできる限り多くのトリックを勝ちに行く(各1VP)のか、ヴィランとして全てのトリックで敗れる(4VP)ように暗躍するのか決めなくてはなりません。また、そのラウンドでヴィランを選択したプレイヤーがトリックを取ってしまった場合、何が起こるのかに注目しましょう。彼らは突如、できる限り多くのトリックで勝利するように立ち回り、ヒーローたちのVP獲得を阻止してきます。
ヒーロー/ヴィラン選択によって、『オリジン・ストーリー』のユニークで、デザインのし甲斐があった内容物、VPダイヤルを生み出しました。プレイヤーはラウンドごと、ダイヤルの片面(ヒーローかヴィラン、各面がその陣営側の得点条件を示している)を同時にテーブルに置いて、自身の陣営を宣言します。この両面仕様のダイヤルは、プレイヤーのVPを記録するものとしても機能します。VPは公開情報で、どちらの面も常に自身の現在の獲得VPを表しています。これは難しいデザイン設計でした。

『オリジン・ストーリー』デザイナーズノート その2はこちら
――Stonemaier Gamesブログ(外部ページが開きます)より
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